自動火災報知設備の絶縁抵抗計|測定電圧が条文で250Vに指定されている
この記事の立場:筆者が全機種を実際に使ったレビューではありません。 法令が要求する要件と、各メーカーの公表スペックを突き合わせて「何が要件になるか」を 整理したものです。使用感の話は書いていません。
絶縁抵抗計のカタログを開くと、真っ先に目に入るのは測定レンジの広さや、絶縁抵抗の最大表示値、あるいは本体の防塵防水性能といった項目です。電気工事の現場でメガーを選ぶとき、多くの人がまず気にするのはそのあたりの数字だと思います。
ところが自動火災報知設備の点検で必要になるメガーは、選ぶ基準が少し違います。一般的な低圧電路の絶縁抵抗測定であれば、電気設備の技術基準(電気設備に関する技術基準を定める省令)は判定値だけを決めていて、測定電圧をいくつのレンジで測るかは実務側の判断に委ねられています。そのため500V中心、あるいは500Vと1000Vの二レンジで揃えたメガーが多くの現場で使われています。
しかし自動火災報知設備については、消防法施行規則がこの構造をひっくり返しています。判定値だけでなく、測定に使う絶縁抵抗計の電圧まで条文の中で名指ししているのです。これは電気設備の一般則とは異質な決め方で、ここを知らずに手持ちのメガーをそのまま消防設備の点検に持ち込むと、レンジが合わないという事態にぶつかることがあります。
カタログの目立つ数字と、条文が実際に指定している数字がずれている。この記事では、そのずれがどこから来ているのかを、条文の文言に沿って整理します。
根拠となる条文
自動火災報知設備の絶縁抵抗に関する要件は、消防法施行規則第24条第一号ロに定められています。この条文は見出しにある通り「自動火災報知設備に関する基準の細目」の一部で、配線に関する規定のひとつとして絶縁抵抗の基準を置いています。
条文はこう書いています。
「電源回路と大地との間及び電源回路の配線相互の間の絶縁抵抗は、直流二百五十ボルトの絶縁抵抗計で計つた値が、電源回路の対地電圧が百五十ボルト以下の場合は〇・一メガオーム以上、電源回路の対地電圧が百五十ボルトを超える場合は〇・二メガオーム以上であり、感知器回路(電源回路を除く。)及び附属装置回路(電源回路を除く。)と大地との間並びにそれぞれの回路の配線相互の間の絶縁抵抗は、一の警戒区域ごとに直流二百五十ボルトの絶縁抵抗計で計つた値が〇・一メガオーム以上であること。」 (消防法施行規則 第24条 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006)
この条文が定めているのは、あくまで自動火災報知設備の設置及び維持に関する基準の細目です。ここから読み取れることは大きく二つあります。一つは、測定に使う絶縁抵抗計そのものが「直流二百五十ボルトの絶縁抵抗計」であることが条文で指定されている点です。もう一つは、判定値が回路の種類と対地電圧によって0.1メガオーム以上、あるいは0.2メガオーム以上という形で分かれている点です。
電源回路については対地電圧が150ボルトを境に判定値が変わり、感知器回路・附属装置回路については警戒区域ごとに0.1メガオーム以上という基準が置かれています。この条文が要求しているのは測定電圧と判定値のセットであり、それ以外の測定手順や点検周期についてはこの条文からは出てきません。
ここから決まる、選定の条件
250Vレンジの有無が最初の関門になる
条文が「直流二百五十ボルトの絶縁抵抗計で計つた値」と明記している以上、点検で使う絶縁抵抗計には250Vのレンジが搭載されている必要があります。電気工事用に流通しているメガーは500Vと1000Vの二レンジ、あるいは1000Vのみという機種が少なくありません。こうした機種を自動火災報知設備の点検に使おうとすると、条文が求める測定電圧のレンジ自体が存在しないという状態になります。選定の最初の関門は、まず250Vのレンジがカタログスペックに載っているかどうかです。
判定値の下限側での分解能
条文が求める判定値は0.1メガオーム以上、または0.2メガオーム以上です。数値としては大きくないため、絶縁抵抗計の測定範囲としては下限側の性能が問われます。メーカーが公表している測定範囲と精度の表記を見て、0.1メガオーム前後の値を安定して読み取れる仕様になっているかを確認する必要があります。測定範囲が広いことをカタログで強調している機種でも、下限側の目盛りやデジタル表示の分解能が粗い場合は、条文が求める判定と照らし合わせたときに読み取りにくいことがあります。
電源回路と感知器回路・附属装置回路を分けて測る運用
条文は電源回路と、感知器回路・附属装置回路とで判定値の決め方を分けています。電源回路は対地電圧150ボルトを境に0.1メガオーム以上か0.2メガオーム以上かが変わり、感知器回路・附属装置回路は警戒区域ごとに0.1メガオーム以上という基準です。これは測定器そのもののスペックというより、点検時にどの回路をどう区切って測るかという運用の話ですが、条文が回路ごとに判定値を分けている以上、測定結果を回路ごとに記録できる機種かどうかも選定の材料になります。メモリ機能やデータ転送機能を備えた機種であれば、警戒区域ごとの記録がしやすくなります。
250V以外のレンジが不要とは言えない
自動火災報知設備の点検で250Vレンジが必須になるからといって、500Vや1000Vのレンジが不要になるわけではありません。点検業務では自動火災報知設備以外の電気設備も併せて扱う場面が多く、そちらでは別の測定電圧が求められることがあります。250Vレンジを持つことは自動火災報知設備の点検における最低条件であって、それだけで機種を絞り込むと、他の設備の点検で別の測定器が必要になることがあります。
機種の比較
{{要リンク差し込み: 比較する機種とかんたんリンクをここに入れる}}
用途別の結論
消防設備点検を主な業務として絶縁抵抗計を選ぶ場合は、250Vレンジが搭載されていることを最優先で確認する必要があります。第24条第一号ロが「直流二百五十ボルトの絶縁抵抗計」と条文で名指ししている以上、このレンジが無い機種は自動火災報知設備の点検という用途には合いません。
電気工事と消防設備点検の両方を一台でこなしたいという立場であれば、250V・500V・1000Vの三レンジを備えた機種を検討する余地があります。この場合はレンジの多さだけでなく、0.1メガオーム前後の下限側でどの程度の分解能が確保されているかも公表スペックで確認しておくと、後から読み取りにくさに気づくことを避けられます。
すでに500V中心のメガーを保有していて、自動火災報知設備の点検業務が増えてきたという立場であれば、既存の機種に250Vレンジがあるかをまず確認します。無ければ買い替えではなく、250Vレンジを持つ機種を追加で用意するという選択も考えられます。
買う前に確認すること
絶縁抵抗計には校正の有効期限があり、点検記録に使う測定器として校正証明書の提示を求められる場面があります。購入時に校正証明書が付属するか、また校正の周期がどの程度かはメーカーや販売店に確認しておくと安心です。
対応電圧については、カタログの表記が「最大1000V」などとまとめて書かれている場合、250Vという特定のレンジが実際に測定用として選べるのか、それとも表示上の範囲に含まれているだけなのかを見分ける必要があります。レンジ切替スイッチの表記を製品ページやマニュアルで確認しておくと取り違えを防げます。
付属品としては、測定用のリード線やクリップの形状が現場の端子に合うかどうかも実務上は重要です。特に警戒区域ごとに測定を繰り返す点検では、着脱のしやすいクリップかどうかが作業の負担に直結します。
なお、資格や届出、点検の実施主体について不明な点がある場合は、所轄の消防署への確認が必要になります。
まとめ
自動火災報知設備の絶縁抵抗測定は、消防法施行規則第24条第一号ロが測定電圧そのものを「直流二百五十ボルトの絶縁抵抗計」と条文で指定している点が、一般的な電気設備の絶縁抵抗測定と大きく異なります。判定値も対地電圧150ボルトを境に0.1メガオーム以上・0.2メガオーム以上と分かれ、感知器回路・附属装置回路は警戒区域ごとに0.1メガオーム以上という基準が置かれています。
絶縁抵抗計を選ぶときにカタログで目立つ測定範囲の広さや精度の高さは、条文が求める250Vレンジの有無や下限側の分解能とは別の話です。まず条文が指定する測定電圧のレンジが搭載されているかを確認し、そのうえで判定値の下限側をどこまで読み取れるかというスペックを見ていくことが、選定の順序として合理的です。
この記事が役に立ったら:
X でシェア