点検計器ラボ
測定器の選び方

客席誘導灯の照度計の選び方|測る面と測る場所が条文で決まっている

この記事の立場:筆者が全機種を実際に使ったレビューではありません。 法令が要求する要件と、各メーカーの公表スペックを突き合わせて「何が要件になるか」を 整理したものです。使用感の話は書いていません。

照度計のカタログを開くと、まず目に入るのは測定範囲と精度等級です。0.1ルクスから測れるのか、JIS規格のどの等級に対応しているのか。数字が並ぶと、それだけで機種の良し悪しが決まるような気がしてきます。

しかし客席誘導灯の点検現場で実際に問われるのは、そうした測定範囲の広さではありません。むしろ「どこを、どの向きで測るか」という、もっと手前の話です。消防法施行規則第28条は、客席誘導灯の照度をどこで測るかを条文自体が指定しています。測る場所と測る面がすでに決まっているのですから、受光部がその測り方に合う形状かどうかのほうが、実務上は効いてきます。

たとえば受光部を垂直に立てて壁の照度を測るような使い方を想定した機種と、床に置いて水平面を測ることを想定した機種とでは、同じ「照度計」というくくりでも扱いやすさがまったく違います。カタログのスペック欄にはこの違いがほとんど書かれていません。測定範囲や精度等級の数字が並ぶ一方で、受光部を床にどう置くかという情報は付属品の写真から読み取るしかない、というのが実情です。

このサイトでは以前、建築基準法施行令を根拠とする非常用照明の照度測定について書きました。客席誘導灯の照度測定は、根拠となる法令自体が違います。根拠法が違えば、条文が指定する測定面の書き方も違ってきます。同じ感覚で機種を選ぶと、条文が求めている測り方とずれてしまう可能性があります。

根拠となる条文

客席誘導灯の照度測定について、消防法施行規則第28条は次のように定めています。

「令第二十六条第二項第三号の客席誘導灯の客席における照度は、客席内の通路の床面における水平面について計るものとする。」(e-Gov 消防法施行規則第28条)

この条文が指定しているのは、測定の対象と測定する面の二つです。対象は「客席誘導灯の客席における照度」で、測定面は「客席内の通路の床面における水平面」です。壁面の照度でも、座席そのものの照度でもなく、通路の床面を基準にした水平面照度を計るものとされています。

条文の分量としてはこれだけです。測定範囲や精度等級についての言及はありません。だからこそ、この短い一文をどう選定条件に落とし込むかが、機種選びのポイントになります。

ここから決まる、選定の条件

測る面は「水平面」と決まっている

第28条が「水平面について計るものとする」と定めている以上、受光部を水平に保った状態で測定できることが前提になります。受光部を手で斜めに構えて数値を読むような使い方では、条文が指定する測り方と一致しているかが怪しくなります。受光部を床に平らに置ける構造か、あるいは水平を保つための脚や台がついているかどうかが、まず確認すべき点です。カタログの写真で受光部の形状や付属の台座を見ておくと、この点は判断しやすくなります。

測る場所は「客席内の通路の床面」

条文は測定場所も「客席内の通路の床面」と名指ししています。客席内の通路は座席と座席の間の限られたスペースであることが多く、大きな据置き型の受光部や、本体と受光部が一体化して取り回しにくい機種は、この場所で使いにくくなります。受光部が本体と分離しているタイプであれば、狭い通路にも受光部だけを差し込みやすく、ケーブルの取り回しさえ確保できれば本体は手元に置いたまま測定できます。通路の床面という具体的な場所が条文で指定されているため、受光部の大きさやケーブルの長さといった、カタログの前面には出てこない仕様が効いてきます。

記録のしやすさ

第28条は「計るものとする」とだけ定めていて、測定値の記録方法までは規定していません。この点は条文から直接導ける要件ではありませんが、点検記録として測定値を残す必要がある場面では、数値を保持できる表示機能があると読み取りやすくなります。これは条文の要求というより実務上の使い勝手の話として切り分けて考える必要があります。

根拠法が違うと測定面の指定も別物になる

非常用照明の照度測定は建築基準法施行令が根拠になっています。一方、客席誘導灯の照度測定は消防法施行規則第28条が根拠です。根拠となる法令が異なれば、測定面の指定の書きぶりも当然変わってきます。現場で両方の設備を扱う場合は、いま測っているのがどちらの設備で、どの条文に基づく測定なのかを先に確認しておく必要があります。同じ照度計を使い回すこと自体は問題になりませんが、測定面の指定を取り違えないようにする意識は必要です。

機種の比較

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用途別の結論

消防用設備の点検業務で客席誘導灯を扱う立場であれば、まず受光部を水平に保って床に置ける形状かどうかを確認するのが出発点になります。第28条が指定しているのは水平面かつ床面という条件なので、この二つを満たせない機種は、そもそも条文が想定する測り方に合わせにくいということになります。

非常用照明と客席誘導灯の両方を点検する立場であれば、根拠法ごとに測定面の指定が異なる点を踏まえて、受光部の角度を変えられる、あるいは分離型で用途に応じて置き方を変えられる機種のほうが対応しやすくなります。

施設の管理者としてスポット的に照度を確認したい場合も、条文が求めている測り方、つまり客席内の通路の床面で水平に測るという条件を満たせるかどうかを、まず購入前にカタログの受光部形状で確認しておくとよいでしょう。

買う前に確認すること

照度計には校正証明書が付属することが多く、次回校正の時期がいつになるかは購入前に確認しておく価値があります。点検業務で使う場合、校正の有効期限が切れた状態で測定した数値は信頼性が下がってしまいます。

受光部と本体が別売りなのか、購入時点でセットになっているのかも機種によって異なります。水平を保つための台座や三脚、水平器がオプション扱いになっている場合もあるため、床面での水平面測定を想定しているなら付属品の内容を確認しておく必要があります。

電源についても、電池式なのか、対応する電圧はどうなっているのか、機種ごとに仕様が異なります。価格や在庫は変動しますので、購入を検討する時点でメーカーの公表情報を確認することをおすすめします。

まとめ

客席誘導灯の照度計選びは、測定範囲や精度等級といったカタログの前面に出る数字だけでは決まりません。消防法施行規則第28条は「客席内の通路の床面における水平面について計るものとする」と、測る場所と測る面をすでに指定しています。この指定を満たせる受光部の形状かどうかが、実務上の選定条件になります。非常用照明とは根拠となる法令が異なるため、測定面の指定も別物です。対象設備がどの条文に基づくものかをまず確認し、そのうえで受光部の形状や取り回しを見ていくことが、遠回りに見えて確実な選び方になります。

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