電気工事士の免除を使うと、消防設備士甲種4類の筆記は「法令で決まる試験」になる
受験体験ではなく、公表されている試験制度を整理した記事です。合否や勉強法の話は含みません。
この記事の立場:受験体験記ではありません。一般財団法人消防試験研究センターが 公表している試験科目・問題数・合格基準・免除一覧表を突き合わせて、 「免除を受けると何が変わるか」を数えたものです。勉強法や参考書の話は書いていません。
消防設備士甲種第4類は自動火災報知設備を扱う資格で、このサイトが扱っている加煙・加熱試験器や騒音計は、まさにこの資格の点検・整備で使う道具です。電気工事の仕事をしている人が次に取る資格として名前が挙がりやすく、そのときほぼ必ずセットで語られるのが「電気工事士を持っていると科目免除がある」という話です。
免除があること自体は事実です。ただ、免除の話はたいてい「楽になる」で終わってしまい、免除を受けたあとに何問残り、その何問で合格基準を満たすことになるのかまでは書かれていません。ここが抜けていると、免除を申請するかどうかを判断できません。
消防試験研究センターは、科目・問題数・合格基準・免除の内容をいずれも公表しています。数えれば答えは出るので、数えます。
免除なしのとき、何が何問出るのか
甲種第4類の試験科目と問題数は、消防試験研究センターの「試験科目及び問題数」に掲載されています(消防試験研究センター)。第4類は電気系の類なので、機械に関する問題は出題されません。
| 科目 | 内訳 | 問題数 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 共通8 + 類別7 | 15 |
| 基礎的知識 | 電気10(機械は出題なし) | 10 |
| 構造・機能・工事・整備 | 電気12 + 規格8(機械は出題なし) | 20 |
| 筆記 計 | 45 | |
| 実技 | 鑑別等5 + 製図2 | 7 |
試験の方法は筆記が四肢択一式のマークカード、実技が「写真・イラスト・図面等による記述式」で、甲種(特類以外)の試験時間は3時間15分です(消防試験研究センター)。
⚠ 「筆記2時間15分+実技1時間」という記述を見かけますが、センターが公表しているのは通しで3時間15分という表記です。時間配分を自分で決める形式なので、科目ごとに時間が区切られていると思って計画を立てると想定が狂います。
合格基準は「免除を受けた以外の問題で」判定される
ここが免除の損得を決める一文です。合格基準は次のように公表されています。
筆記試験において、各科目毎に40%以上で全体の出題数の60%以上、かつ、実技試験において60%以上の成績を修めた者を合格とします。なお、試験の一部免除がある場合は、免除を受けた以外の問題で上記の成績を修めた方を合格とします。 (消防試験研究センター「試験の方法」)
つまり免除は「その科目を満点扱いにしてくれる制度」ではありません。免除された問題は分母から消え、残った問題だけで60%を取ることが求められます。 得意な科目を免除にすると、得点源が消えて、苦手な科目の比重が上がります。
電気工事士の免除で、実際に何が消えるか
第一種・第二種いずれかの電気工事士免状を持っている場合の免除内容は、センターの「試験の一部免除・試験時間・試験問題数一覧表(甲種)」に、類ごとの表として載っています(PDF)。甲種第4類の行を読むと、消えるのは次の3か所です。
- 基礎的知識(電気)10問 → 免除
- 構造・機能・工事・整備のうち電気12問 → 免除
- 実技の鑑別等 → 1問だけ免除
- 試験時間 3時間15分 → 2時間30分
規格8問は免除されません。法令15問も残ります。製図2問も残ります。
⚠ 表の「電工」は、第一種・第二種のどちらでも同じ扱いです(同PDF備考欄)。二種だから免除が小さい、ということはありません。免除の申請には電気工事士免状のコピーが要ります。
⚠ もう一点、申込みの時期で引っかかりやすいところがあります。センターの受験資格・免除の要件は、いずれも「電気工事士免状の交付を受けている者」と書かれています(甲種について、免除一覧表PDFの証明書類欄は「電気工事士免状のコピー」)。試験に合格しただけで免状がまだ手元に無い段階では、コピーを添付できません。 電気工事士に受かってすぐ甲種4類を申し込む場合は、免状の交付が間に合うかを先に確認してください。
数えるとこうなる
免除を適用したあとの筆記は、法令15問+規格8問の23問です。
| 免除なし | 電工免除あり | |
|---|---|---|
| 筆記の総数 | 45問 | 23問 |
| うち消防関係法令 | 15問(33%) | 15問(65%) |
| うち規格 | 8問(18%) | 8問(35%) |
| 実技 | 鑑別5+製図2=7問 | 鑑別4+製図2=6問 |
| 試験時間 | 3時間15分 | 2時間30分 |
割合から必要な正解数を逆算すると、筆記全体60%は23問中約14問、科目ごとの40%は法令で6問、規格で4問という計算になります。実技60%は6問中約4問です。
⚠ この必要問題数は割合からの逆算です。端数をどう扱うか、素点なのか配点なのかはセンターが公表していません。 境界の点数で判断が要る場面では、この数字を根拠にしないでください。ここで見てほしいのは正確な合格ラインではなく、次の構造のほうです。
免除を受けると、法令が単独で合否を決める科目になる
免除後に残る筆記23問のうち、15問が消防関係法令です。全体の65%を法令が占めます。
一方で規格は8問しかありません。筆記の合格ラインが14問前後だとすると、規格を全問正解しても届きません。 法令で確実に取ることが、そのまま筆記の通過条件になります。
免除なしなら、法令を多少落としても基礎的知識と構造・機能の電気22問で埋め合わせができました。電気工事の実務をしている人にとって、この22問は本来もっとも点が読める部分です。免除は、その22問を自分から手放す選択です。
整理すると、免除で得られるものと失うものはこうなります。
- 得るもの: 試験時間が45分短くなる。当日に解く問題数が45→23に減る。準備の範囲が法令と規格に絞れる
- 失うもの: 得点源だった電気22問。1問あたりの重みが増える(筆記1問の価値は約2.2%から約4.3%へ、実技1問は約14%から約17%へ)
⚠ どちらが有利かは、法令にどれだけ時間を割けるかで決まります。電気の実務経験が長いほど免除の機会損失は大きくなる、という向きの話であり、「実務経験があるから免除で楽になる」とは限りません。
免除を使うなら、本の選び方も変わる
免除を前提にすると、勉強の配分が変わります。電気の理論・構造の章は試験に出ません。 代わりに法令15問と規格8問、そして免除されない製図2問が残ります。
一般的なテキストは電気の章に相当なページを割いているので、免除を使う人にとっては読まない部分が増えます。逆に製図は免除がまったく効かない(鑑別が1問減るだけ)ので、ここだけは別に手当てが要ります。
⚠ この記事の立場:以下は運営者が実際に使った教材のレビューではありません。上で数えた「免除後に何が残るか」から、どの範囲を厚くする必要があるかを示すために挙げています。
先に:発行年を見てください
消防設備士の対策書は、同じ書名のまま版が入れ替わります。 通販の検索結果には旧版と新版が並んで出るため、書名だけで選ぶと数年前の版を買うことになります。法令改正が入る分野なので、ここは価格より先に見るべき項目です。
以下は発行年月を確認したうえで挙げています(出版情報は openBD および国立国会図書館サーチで照合)。
① 法令・規格を含む全体のテキスト|弘文社・2026年2月
弘文社の工藤政孝氏のシリーズは、消防設備士では定番として長く版を重ねているものです。免除を使う場合は、電気の章を飛ばして法令・規格・製図に時間を寄せる読み方になります。
Amazonで見る(わかりやすい!第4類消防設備士試験・2026年2月)
② 法令を数でこなす問題集|弘文社・2026年6月
免除後は筆記23問のうち15問が法令です。合否がここで決まる以上、読むより解く量が要ります。
⚠ この問題集は同じ書名で2023年9月発行の版も流通しています。上のリンクは2026年6月発行のものです。
Amazonで見る(本試験によく出る!第4類消防設備士問題集・2026年6月)
③ 製図だけを別に対策する|弘文社・2024年3月
製図2問は免除の対象外で、免除後の実技6問中2問を占めます。実技は60%以上が必要なので、製図を2問とも落とすと、鑑別4問を全問正解してようやく届きます(4問/6問=66.7%)。その状態では鑑別で1問でも落とすと届きません(3問/6問=50%)。免除で実技の母数が7問から6問に減っている分、余裕が消えています。専用の1冊を入れる価値があるのはこの構造のためです。
Amazonで見る(第4類消防設備士 過去問題集 製図編・2024年3月)
⚠ 同じ「製図編」でも、2017年3月発行の『これだけはマスター! 製図編』が検索結果の上位に出てきます。 書名が似ているので、購入前に発行年を確認してください。
同じ日に乙種7類も受けられる
同じPDFの末尾には、複数受験の合計試験時間が載っています。甲種4類を電工免除で単独受験すると2時間30分ですが、乙種7類を足しても合計3時間15分、増えるのは45分だけです。
乙種7類は漏電火災警報器で、電気工事の現場と地続きの設備です。しかも電工免除の効き方が甲種4類より大きく、実技が丸ごと消えます。
→ 電気工事士を持っていると、消防設備士乙種7類は実技が丸ごと消える
受験資格そのものが電気工事士で満たせる
甲種は乙種と違い、受験資格が要ります。国家資格による受験資格の一覧に電気工事士が明記されています。
電気工事士(試験の一部免除有)
- 電気工事士法第2条第4項に規定する電気工事士免状の交付を受けている者 (消防試験研究センター「甲種について」)
つまり電気工事士免状は、受験資格と科目免除の両方を同時に満たします。学歴要件や実務経験の証明を用意する必要がないという意味では、ここが実務者にとって一番大きい利点かもしれません。免除を使うかどうかは申請時に選べますが、受験資格として使うことと、科目免除を申請することは別の話です。免除を申請しなければ、45問すべてを受けたうえで甲種を受験できます。
まとめ
電気工事士を持っている人にとって、消防設備士甲種4類の免除は「時間が45分短くなる制度」であると同時に、「得点源の22問を捨てて、法令15問と規格8問だけで勝負する制度」でもあります。合格基準が免除を受けた以外の問題で判定されるため、免除した瞬間に合否を決める科目が法令へ移ります。
判断材料としては、次の一点に集約できます。法令15問で6割前後を確実に取れる状態を作れるなら免除は有利、そうでないなら電気22問を残したほうが安全、ということです。
なお、試験制度・手数料・免除の内容は改定されることがあります。この記事は2026年8月時点で消防試験研究センターが公表している内容にもとづいています。申込みの前に必ず実施支部の試験案内で最新の情報を確認してください。
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