点検計器ラボ
測定器の選び方

音響装置の音圧測定に使う騒音計の選び方|法令は種類を指定していない、だからJISで選ぶ

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この記事の立場:筆者が全機種を実際に使ったレビューではありません。規則が要求する判定値と、各メーカー・正規代理店の公表スペックを突き合わせて「何が要件になるか」を整理したものです。使用感の話は書いていません。

この記事は、非常用照明の照度計の記事と対になります。

照度計のほうは、告示が「十分に補正された低照度測定用照度計を用いて測れ」と測定器の種類を名指ししていました。騒音計はそうではありません。規則は音圧の数値を決めているだけで、どんな騒音計を使えとは書いていない。

だからこそ、何を根拠に選ぶかを自分で決めておく必要があります。

根拠となる数値

消防法施行規則第24条第五号イから引用します。地区音響装置(ベル等)の規定です。

(イ) 取り付けられた音響装置の中心から一メートル離れた位置で九十デシベル以上であること。

音声によるものは同条の別の号で、次のように定められています。

(イ) 取り付けられた音響装置の中心から一メートル離れた位置で九十二デシベル以上であること。

ガス漏れ火災警報設備の検知区域警報装置は、同規則でこうです。

当該検知区域警報装置から一メートル離れた位置で音圧が七十デシベル以上となるものであること。

非常放送設備のスピーカーは、規則第25条の2で音響パワーレベルによる区分が定められており、L級が92デシベル以上、M級が87デシベル以上92デシベル未満、S級が84デシベル以上87デシベル未満。放送区域の音圧レベルは次のとおりです。

スピーカーは、階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合、放送区域ごとに、次の式により求めた音圧レベルが当該放送区域の床面からの高さが一メートルの箇所において七十五デシベル以上となるように設けること。

整理します。

対象判定値測定位置
地区音響装置(ベル等)90 dB以上装置の中心から1m
地区音響装置(音声)92 dB以上装置の中心から1m
検知区域警報装置(ガス漏れ)70 dB以上装置から1m
非常放送の放送区域75 dB以上床面から高さ1m

測る値は70〜92 dBの範囲に収まります。 ここが逆算の出発点です。

ここから、騒音計に必要なスペックが決まる

1. 測定範囲は選定基準にならない

70〜92 dBという帯域は、市販の騒音計であればほぼすべてが測定範囲に含みます。30〜130 dBといった仕様が一般的なので、ここで機種は絞れません。

カタログの測定範囲を見比べる作業に意味はありません。

2. 効くのは「JIS C 1509-1 クラス2」に適合しているか

法令が種類を指定していない以上、点検結果の根拠を自分で説明できる必要があります。その根拠になるのが JIS C 1509-1(電気音響 ― サウンドレベルメータ)の等級です。

  • クラス1(精密騒音計相当) — 許容誤差が小さい。環境測定・研究向け
  • クラス2(普通騒音計相当) — 消防設備点検の音圧確認はこの等級で足ります

安価な機種のカタログには「IEC 60651 TYPE 2適合」と書かれているものがあります。IEC 60651 は旧規格です。 現行は IEC 61672-1(JIS C 1509-1 に対応)なので、同じ「クラス2/TYPE2」の表記でも準拠している規格が違います。

1万円台の機種は旧規格表記のものが多く、2万円前後から現行規格(IEC 61672-1 / JIS C 1509-1 準拠)の表記になります。この価格差の中身がここです。

3. 周波数重み付けと時間重み

騒音計には測定の重み付け設定があります。

  • 周波数重み付け — A特性(人の耳の感度に合わせた補正)と C特性(ほぼ平坦)。音圧の判定は通常 A特性
  • 時間重み — FAST(速い応答)と SLOW(平均化)。ベルのような断続音は FAST

両方を切り替えられることを確認してください。安価な機種でも大半は対応していますが、固定式のものもあります。

4. 検定付きが要るのは「官庁提出」の場面

計量法の型式承認を受けた検定付きの騒音計があります。価格は一段上がります。

これが必要になるのは、騒音規制法に基づく測定など、行政に対して法的な証明力を持つデータを出す場面です。消防設備点検の音圧確認で常に必要になるものではありません。

ただし所轄消防本部の運用によることがあるので、迷うなら先に確認してください。「とりあえず検定付き」で数万円上乗せする前に、要否を確かめる価値があります。

3機種の比較

数値はいずれもメーカー・正規代理店の公表値です。

サトテック TM-102サトテック CENTER325サトテック CENTER32
準拠規格IEC 651 TYPE 2適合(旧規格IEC 60651 TYPE 2適合(旧規格IEC 61672-1 クラス2適合(JIS C 1509準拠)
A特性/C特性公表値要確認A特性・C特性公表値要確認
FAST/SLOW公表値要確認FAST・SLOW公表値要確認
その他オートレンジ短納期校正に対応アナログ電圧出力端子付
実売の目安15,950円14,300円20,900円

(出典:SATOTECH 騒音計一覧 / 格安騒音計・普通騒音計・精密騒音計の比較

用途別の結論

消防設備点検の音圧確認に使う → サトテック CENTER32

3機種の中で唯一、現行規格(IEC 61672-1/JIS C 1509準拠)の表記があります。2万円台で、点検結果の根拠を「JIS C 1509クラス2準拠の騒音計で測定」と書けるのは、この価格帯では価値があります。

とりあえず値を把握したい/予算最優先 → CENTER325 または TM-102

1万円台。数値の目安を取るには使えます。ただし準拠しているのが旧規格(IEC 60651)である点は理解して選んでください。 点検票の根拠として説明を求められたときに弱くなります。

社内確認や事前の当たり付けに使い、正式な点検には別の機種を使う、という使い分けなら合理的です。

官庁提出用のデータを出す → 検定付き機種(リオン NL-43 等)

計量法の型式承認番号を持つ機種です。消防設備点検で常に必要なものではありませんが、要求される立場なら選択肢はここに限られます。価格は大きく上がります。

買う前に確認すること

1メートルをどう担保するか:規則は「装置の中心から1メートル離れた位置」と距離を指定しています。目分量で測ると、判定の根拠として弱くなります。騒音計より先に、コンベックスかレーザー距離計を用意してください。 天井のベルに対して1mを取るには、脚立の位置も含めた段取りが要ります。

暗騒音の扱い:判定値90 dBに対して、周囲の騒音(暗騒音)が大きいと正しく測れません。工場やカラオケボックスのような環境では、暗騒音を先に測って記録しておくほうが安全です。規則自身も、音響が聞き取りにくい場所については「他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができるように措置されていること」を別途求めています。

校正証明書:点検記録に添付を求められる場合があります。同じ型番でも証明書の有無で出品が分かれます。CENTER325のように短納期校正に対応している機種は、定期的に出す前提なら運用が楽になります。

スマホの騒音アプリは使えない:マイクの周波数特性が公表されておらず、A特性補正の仕様も不明です。点検の根拠にはなりません。


まとめ

  • 地区音響装置は1メートル離れた位置で90 dB以上(音声は92 dB、ガス漏れ警報は70 dB、非常放送の放送区域は75 dB)
  • 測る値は70〜92 dBに収まるので、測定範囲では機種が絞れない
  • 照度計と違い、法令は騒音計の種類を指定していない。だから JIS C 1509-1 クラス2 適合を自分の根拠として選ぶ
  • カタログの「TYPE 2」表記には旧規格(IEC 60651)と現行(IEC 61672-1)が混在している。価格差の中身はここ
  • 検定付きは官庁提出用。消防設備点検で常に要るものではない
  • 測定器より先に、1メートルを担保する道具を用意する

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