点検計器ラボ
測定器の選び方

非常用照明の照度測定に使う照度計の選び方|告示が「低照度測定用」を指定している

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この記事の立場:筆者が全機種を実際に使ったレビューではありません。告示が要求する測定方法と、各メーカー・正規代理店の公表スペックを突き合わせて「何が要件になるか」を整理したものです。使用感の話は書いていません。

測定器の選定で、法令が測定器の種類そのものを名指ししているケースは多くありません。非常用照明の照度測定は、その数少ない例です。

告示にこう書かれています。

前号の水平面照度は、十分に補正された低照度測定用照度計を用いた物理測定方法によつて測定されたものとする。

「照度計を使え」ではなく「低照度測定用照度計を使え」です。ここを読み飛ばすと、手元の照度計で測って検査に使えない数値を出すことになります。

順序を逆にします。告示が要求している内容から、必要なスペックを逆算します。

まず前提:非常用照明と誘導灯は別の法律

販売店のページで「消防法に規定されている非常灯や誘導灯」とまとめて書かれているのをよく見ますが、この2つは根拠法が違います。

非常用の照明装置誘導灯
根拠法建築基準法(施行令126条の4・126条の5)消防法(施行令26条)
検査建築設備定期検査(建基法12条)消防用設備等点検(消防法17条の3の3)
求められる照度床面で1ルクス(蛍光灯・LEDは2ルクス)以上誘導灯は「明るさ」ではなく表示面輝度等の規定

この記事が扱うのは左側、建築基準法の非常用照明です。買う理由は建築設備定期検査です。

根拠となる条文

建築基準法施行令第126条の5第一号イから引用します。

照明は、直接照明とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。

そして、この構造方法を定めているのが昭和45年建設省告示第1830号(非常用の照明装置の構造方法を定める件)です。その第四 その他が、実務上いちばん重要です。

一 非常用の照明装置は、常温下で床面において水平面照度で一ルクス(蛍光灯又はLEDランプを用いる場合にあつては、二ルクス)以上を確保することができるものとしなければならない。

二 前号の水平面照度は、十分に補正された低照度測定用照度計を用いた物理測定方法によつて測定されたものとする。

読むべき点が3つあります。

光源で判定値が変わる。 白熱灯なら1ルクス、蛍光灯とLEDなら2ルクス。現場でLED化されている建物なら基準は2ルクスです。

「水平面照度」である。 床面に受光部を水平に置いて測ります。斜めに構えた値ではありません。

測定器の種類が指定されている。 「十分に補正された低照度測定用照度計」。ここが本題です。

ここから、照度計に必要なスペックが3つ決まる

1. 分解能 — 「低照度測定用」の実体はここ

判定値は1ルクスまたは2ルクスです。この値を、意味のある桁数で読めるかが最初の関門になります。

最小表示が0.1ルクスの照度計で2ルクスを測ると、表示は「2.0」です。有効数字は2桁しかなく、精度誤差±3%が乗ると判定の境目で根拠として弱くなります。1ルクス判定の建物なら「1.0」、有効数字2桁です。

最小表示0.01ルクスの機種であれば「2.00」「1.00」と読めます。20ルクスレンジを持っているかどうかが、実際の分かれ目になります。

カタログの「測定範囲 0〜199,900 lx」という表記だけを見ても、この違いは分かりません。測定範囲の広さではなく、一番下のレンジの最小表示を見てください。

2. JIS C 1609-1 の等級

「十分に補正された」の中身は、告示本体には書かれていません。実務上の目安になるのが JIS C 1609-1:2006(照度計 第1部:一般計量器)の等級です。

一般形AA級と一般形A級があり、AA級のほうが許容誤差が小さく規定されています。特に効くのが次の2つです。

  • 視感度応答の誤差(f₁’):人の目の感度曲線とセンサの感度がどれだけ合っているか。LED照明は白熱灯と分光分布が全く違うので、ここがずれていると同じ明るさでも表示値が変わります
  • 余弦応答の誤差(f₂):斜めから入る光をどれだけ正しく拾えるか。床面の水平面照度を測るとき、光は真上からだけ来るわけではありません

告示が等級を名指ししていない以上、A級では駄目だと断言はできません。ただ「十分に補正された」という文言に対して、どちらが説明しやすいかは明らかです。

3. 検定付きかどうか(多くの場合は不要)

各社に「検定付」モデルがあり、通常品より3〜4万円高く設定されています。これは計量法上の取引証明に使う場合の対応品です。

建築設備定期検査の報告のために測る分には、通常モデルで足ります。校正証明書の要否とは別の話なので、混同して高い方を買わないでください。

3機種の比較

上の観点で、実売2〜8万円帯の代表機種を並べます。数値はいずれもメーカー・正規代理店の公表値です。

サトテック CENTER531サトテック LM-777HIOKI FT3424
JIS等級一般形A級準拠一般形AA級準拠一般形AA級
最下位レンジの最小表示0.1 lx公表値要確認0.01 lx(20 lxレンジ)
測定範囲0.0〜199,900 lx0〜199,900 lx0.00〜200,000 lx
精度±3% rdg ±5 dgts直線性 ±2%±2% rdg(3,000 lx超は1.5倍)
データ記録内部メモリ18点内部メモリ99点・USB転送
実売の目安27,500円63,580円78,320円
検定付モデル119,020円

(出典:HIOKI FT3424 製品情報 / SATOTECH JIS規格照度計 一覧 / CENTER531 仕様

用途別の結論

非常用照明の定期検査に使う → HIOKI FT3424

20ルクスレンジで0.01ルクス単位まで読めるのは、この3機種ではFT3424だけです。1〜2ルクスという判定値に対して、有効数字3桁で記録が残せます。JIS一般形AA級で、「十分に補正された低照度測定用照度計」という告示の文言に対して説明できる構成です。

内部メモリ99点とUSB転送があるので、1棟で測定点が多い建物では記録の手間も変わります。

照度計を初めて買う/一般照明の照度確認が主目的 → サトテック CENTER531

2万円台で、JIS A級準拠、LED対応。作業環境の照度確認(JIS Z 9110の推奨照度に足りているか等)にはこれで十分です。

ただし最小表示が全レンジ0.1ルクスなので、1〜2ルクスの判定に使うと有効数字が足りません。非常用照明の検査には向きません。ここを承知の上で選んでください。

中間帯 → サトテック LM-777

AA級準拠で6万円台。ただし最下位レンジの最小表示が公表値から確認できませんでした。非常用照明に使う目的なら、購入前に販売店へ「一番下のレンジの最小表示は0.01ルクスか」を確認してください。 ここが0.1ルクスなら、AA級でも用途には合いません。

買う前に確認すること

校正証明書:定期検査で使う測定器は、校正証明書の提示を求められる場合があります。同じ型番でも「校正証明書付き」と「本体のみ」で出品が分かれます。後から単体で取ると別料金です。

検定付と混同しない:上に書いたとおり、検定付は計量法の取引証明用です。定期検査の報告で必要になるのは通常、検定ではなく校正証明書のほうです。要否は所轄庁の運用によるので、迷うなら先に確認してください。

受光部の形状:床面に置いて水平に測るので、センサ部が本体から分離できる(ケーブルで伸ばせる)タイプのほうが、本体を見ながら測れて楽になります。一体型だと、床に置いた本体を覗き込む姿勢になります。

スマホの照度アプリは使えない:告示が「十分に補正された低照度測定用照度計」と指定している以上、視感度補正・余弦補正の仕様が公表されていない機器の値は根拠になりません。


まとめ

  • 非常用照明は建築基準法の設備。誘導灯(消防法)とは根拠法が違う
  • 判定値は床面の水平面照度で1ルクス、蛍光灯・LEDなら2ルクス(告示1830号 第四の一)
  • 告示は「十分に補正された低照度測定用照度計」と、測定器の種類を名指ししている(同 第四の二)
  • 効くのは測定範囲の広さではなく、一番下のレンジの最小表示。1〜2ルクスを読むなら0.01 lx級が要る
  • JIS C 1609-1 の一般形AA級/A級は、視感度応答(f₁’)と余弦応答(f₂)の許容差が違う
  • 「検定付」は計量法の取引証明用。定期検査には通常不要

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