接地抵抗計の選び方|判定値10Ω・100Ωより、補助極が打てるかで決まる
この記事の立場:筆者が全機種を実際に使ったレビューではありません。解釈が要求する判定値と、メーカーの公表スペックを突き合わせて「何が要件になるか」を整理したものです。使用感の話は書いていません。
接地抵抗計を選ぶとき、判定値から逆算しても答えは出ません。
A種10Ω、D種100Ω。この程度のレンジは、どの機種でも測れるからです。判定値では機種が絞れないというのが、この測定器の特徴です。
実際に選定を分けるのは、現場の地面です。
根拠となる数値
判定値は、経済産業省の電気設備の技術基準の解釈第17条に規定されています。省令第11条を受けた解釈です。
第17条 A種接地工事は、次の各号によること。 一 接地抵抗値は、10Ω以下であること。
3 C種接地工事は、次の各号によること。 一 接地抵抗値は、10Ω(低圧電路において、地絡を生じた場合に0.5秒以内に当該電路を自動的に遮断する装置を施設するときは、500Ω)以下であること。
4 D種接地工事は、次の各号によること。 一 接地抵抗値は、100Ω(低圧電路において、地絡を生じた場合に0.5秒以内に当該電路を自動的に遮断する装置を施設するときは、500Ω)以下であること。
まとめるとこうなります。
| 種別 | 対象 | 接地抵抗値 |
|---|---|---|
| A種 | 高圧以上の機器の外箱等 | 10Ω以下 |
| B種 | 変圧器の高圧側と低圧側の混触防止 | 150/Ig ほか(表17-1) |
| C種 | 300Vを超える低圧の機器 | 10Ω以下(0.5秒以内遮断なら500Ω) |
| D種 | 300V以下の低圧の機器 | 100Ω以下(0.5秒以内遮断なら500Ω) |
C種・D種の「0.5秒以内に遮断する装置」の但し書きは実務でよく効きます。 漏電遮断器が入っていれば500Ωまで許容されるので、100Ωを切れずに悩む前に、その回路の保護がどうなっているかを先に確認してください。
なおB種は定数ではありません。「150/Ig」(1線地絡電流Ig で割る)という式で、遮断時間によって300/Ig、600/Ig になります。事前に値を出しておかないと、現場で合否が判断できません。
ここから、接地抵抗計に必要なスペックが決まる
1. 測定範囲の上限は選定基準にならない
判定値の最大はC種・D種の但し書きで500Ωです。B種で計算値が大きくなる場合を除けば、1000Ωまで測れれば実務は足ります。
各社の標準機はここを十分に超えているので、カタログの測定範囲で機種を絞ることはできません。ここを比較しても意味がありません。
2. 効くのは測定方式 — 補助接地棒が打てるか
これが本題です。
原則の測定方法は**3極法(精密測定)**です。接地極(E)、補助電圧極(P)、補助電流極(C)の3本を、一直線上に間隔を空けて地面に打ち込みます。
問題は、打ち込める地面があるとは限らないことです。
| 現場 | 3極法 | 対処 |
|---|---|---|
| 土・芝生・砂利 | できる | 3極法でよい |
| アスファルト・コンクリートに覆われた敷地 | できない | 簡易測定(2極法)またはクランプ式 |
| ビル内・機械室・屋上 | できない | 同上 |
| 補助極を打つ距離(数m〜10m)が取れない | できない | 同上 |
都市部の改修現場では、3極法が使えない場面のほうが多くなります。
簡易測定(2極法) は、既設の接地極を補助極の代わりに使う方法です。補助棒を打たずに済みますが、測定値は「対象の接地抵抗+既設接地極の抵抗」の合計になります。既設側が十分に低いことが前提で、対象もD種相当に限られます。
クランプ式 は接地線を挟むだけで測れます。接地極を外さずに測れるのが最大の利点ですが、多点接地された系統であることが測定の前提です。単独接地では原理的に測れません。価格も12〜15万円と一段上がります。
3. 3極法しかできない機種を最初に買わない
各社のラインナップを見ると、価格の安い機種ほど3極法専用です。
土の現場しか行かないなら問題ありません。ただしアスファルトの現場に1度でも当たると、その機種では測れません。そのとき買い直しになります。
3〜4万円の差で「3極法+簡易測定」の両対応が買えるので、行く現場が読めないうちは両対応を選ぶほうが結果的に安く済みます。
3機種の比較
数値はいずれもメーカーの公表値です。
| 共立 MODEL 4102A | 共立 MODEL 6017 | 共立 KEW 4200 | |
|---|---|---|---|
| 測定方式 | 3極法 / 2極法 | 3極法 / 簡易測定 | クランプ式 |
| 補助接地棒 | 必要(2極法時は既設極を利用) | 必要(簡易測定時は不要) | 不要 |
| 接地線の外し | 必要 | 必要 | 不要(挟むだけ) |
| 前提条件 | — | 既設接地極があること | 多点接地系統であること |
| 希望小売価格 | 38,000円(税込41,800円) | 52,000円(税込57,200円) | 122,000円(税込134,200円) |
(出典:共立電気計器 接地抵抗計ラインナップ)
上表は希望小売価格です。この分野は実売との開きが大きく、MODEL 6017 は調査時点で37,900円前後で流通していました(希望小売の約66%)。希望小売だけを見て予算を判断しないでください。
用途別の結論
1台目/現場が読めない → 共立 MODEL 6017
3極法と簡易測定の両方ができます。土の現場でもアスファルトの現場でも、とりあえず値が取れます。行く現場が固定されていない立場なら、ここから始めるのが無難です。
希望小売は税込57,200円ですが、実売は4万円弱まで下がります。3極法専用の下位機種との差額は実質数千円しかありません。この差で「アスファルトの現場に当たったら測れない」という制約が消えるなら、迷う理由は薄いと思います。
土の現場が中心/予算を抑える → 共立 MODEL 4102A
3万円台後半。3極法に加えて2極法も持っています。戸建てや工場敷地など、補助極を打てる現場が中心ならこれで足ります。
接地線を外せない・止められない設備 → 共立 KEW 4200(クランプ式)
12万円台と高価ですが、接地線を外さずに測れるのは他の方式では代替できません。稼働中の設備、止めると影響が大きい系統ではこれ一択になります。
ただし多点接地が前提です。単独接地の対象には使えません。 ここを理解せずに買うと、現場で値が出ずに困ります。
買う前に確認すること
補助接地棒とコードが付属するか:3極法は補助棒2本と、10m・20m級のコードが要ります。本体だけ買って現場で足りないことがあるので、セット内容を必ず確認してください。単品で買い足すと割高です。
校正証明書:竣工検査の記録に添付を求められる場合があります。同じ型番でも証明書の有無で出品が分かれます。
B種の判定値は事前に計算しておく:上に書いたとおりB種は定数ではありません。1線地絡電流Ig を実測値または解釈の表17-2の計算式から出しておかないと、現場で測っても合否が言えません。これは測定器の性能とは無関係の準備です。
測定前の接地線の扱い:3極法・簡易測定では、原則として測定対象の接地線を系統から切り離します。稼働中の設備で安易に外すと保護が抜けるので、切り離しの可否を先に確認してください。外せない前提ならクランプ式を選ぶことになります。
まとめ
- 判定値はA種10Ω/C種10Ω/D種100Ω(電技解釈17条)。C種・D種は0.5秒以内遮断なら500Ωまで許容
- B種は定数ではなく150/Ig。事前計算が要る
- 判定値の上限が500Ω程度なので、測定範囲の広さでは機種が絞れない
- 選定を分けるのは補助接地棒が打てるかどうか。アスファルト・ビル内では3極法が使えない
- 現場が読めないうちは3極法+簡易測定の両対応を選ぶ。3極法専用機は買い直しになりやすい
- 接地線を外せない設備はクランプ式一択。ただし多点接地が前提
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